メリーメリーです。こんばんは。
今回は、実はずっとやりたかったけど先延ばしになっていたインタビュー形式でのカバーアルバムの解説をやります。
注)インタビューは自作自演による創作のため実際には行なっていません
The Masterplan 解説
2018年12月6日、ファイナルファンタジー11 (以下、"FF11") のサウンドトラックのカバーアルバム『The Masterplan』がYouTubeにて公開された。
今回は、このカバーアルバムを手掛けたMerrymerry氏に (架空の) インタビューを行い、本作の魅力を紐解いてみた。
”初期の三国にはフォーカスしたい”
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── まずカバーアルバムを製作することになった経緯を教えてください。
Merrymerry 実を言うと今回はもともとアルバムを作る予定ではなかったんです。 最初はDTMのリハビリがてら作ってみようと『Eastward Bound』(銀海航路・外洋航路BGM)をカバーして、せっかくだからと公開してみたら思った以上に反響がありまして。調子に乗ってその後も立て続けに曲を作っていってたら「これアルバムにできるんじゃ?」と思うようになり…。アルバムの半分くらいの曲数をストックしたあたりでちゃんとしたアルバムを作ろうと決めました。
── このアルバムは現状YouTubeのみの公開ということですが、他動画サイト等への公開やCD配布の予定はありますか?
Merrymerry 当初はそういった予定も立てていました。ただ正直グレーな部分の多い話になりますし、それらもふまえて考えた結果今回のような形になりました。なので、これ以上公開や配布を行う予定はありません。
── 以前ニコニコ動画の方にもカバー曲を公開していたと伺ったんですが、詳しく教えていただけますか?
Merrymerry 仰った通りで、以前はニコニコ動画の方でFF11のカバー曲を公開していました。他にも弾いてみた動画やFF11以外のゲーム音楽のカバー曲、一時期はボーカロイドもやってました。やり始めたのはもう10年近く前ですね。
── その時はどのBGMを取り上げたんですか?
Merrymerry 今回のアルバムにも収録されていますが『Eastward Bound』『Autumn Footfalls』(過去ロンフォールBGM)『Flowers on the Battlefield』(過去ジュノ周辺エリアBGM)はやりました。他には『Jeweled Boughs』(ワジャーム樹林・バフラウ段丘BGM)や、変わり種で『Evil in Small Doses』(『戦慄!モグ祭りの夜』ラストバトルBGM)もやっていました。『Autumn Footfalls』に関しては当時の音源もこのアルバムに収録されています。
── ちなみに今もニコニコ動画で観られるんでしょうか?
Merrymerry ニコニコ動画の方はもう観られなくなってますね。
── それは残念…。では話を戻しますが、このアルバムに込めた想いなどがあれば教えてください。
Merrymerry ほとんど成り行きで作ることになったようなものなので難しいですね(笑)。ただ、初心にかえりたいという想いから一部でもいいから初期の三国にはフォーカスしたいと思っていたので、それぞれの国に関連するBGMカバーは必ず1曲は取り入れました。過去ロンフォールとグスタベルグ、天の塔や過去ウィンダスがそうですね。
── ウィンダスだけ2曲なのは?
Merrymerry それはたまたまです(笑)。
"色んな音楽に触れてきた経験がモノをいう編曲"
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── それでは順に1曲ずつお話していきたんですが、まず雨と足音というSEから入ってダイバージェンスBGMのイントロ部分が挿入されていますね。この辺りはなにか意図やイメージがあったんですか?
Merrymerry 実は一番最後に作ったカバー…って言っていいのかわかりませんが、最後の最後にイントロみたいなものを付け加えようということで作りました。…とある冒険者が探索していたところ突然の雷雨に見舞われて、たまたま近くに見つけた小屋へ慌てて逃げ込んだんですけど実はそこは魔物の巣窟だった、みたいなオチはイメージしてました。
── ちょっとダボイの修道院を連想しました(笑)。
Merrymerry ああ、良い感じですね!ほぼほぼ合ってる(笑)。
── そこから間髪入れずにドラムのフィルインが入り、すごく洒落たジャズアレンジの『Autumn Footfalls』が流れてきました。ここは何か拘った点などありましたか?
Merrymerry 早い段階で『Autumn Footfalls』はジャズアレンジにしようと決めていました。ただ、ジャズといえば即興性やアドリブソロというのが醍醐味ってのがありますけど、いかんせんそこまで作るのは面倒だったのでこれはどうしたものかとしばらく悩みました。さらに編曲している途中ミルト・ジャクソンというビブラフォン奏者の楽曲が耳に入って、それでメインはビブラフォンにしようと思い立ってしまって。でもこれがまた音作りの方で苦労して。挙句ビブラフォンのマルチ音源をギターアンプに通すという、DTMでしかできないような荒技に成り果てました(笑)。
── (笑)。ふと思ったんですが、確かMerrymerryさん本職はギタリストでしたよね。この曲ではギターが一切入っていないようですが?
Merrymerry 実はこの曲を作っている時指を怪我してまして、ギター弾けなかったんですよね。なので全て打ち込みで済ませています。ジャズなのに…。色んな意味で問題作ですね(笑)。
── なるほど(笑)。さて、次は『Eastward Bound』ですが、先ほど最初に作った楽曲と仰ってましたよね?
Merrymerry そうですね。これは10年ほど前に作ったニコニコの方のアレンジと全く一緒です。というかほとんど原曲から変わっていませんが、ほんの少しだけギターロック寄りにした感じでしょうか。わりとやってて楽しかったです、この曲。
── そうなんですね。楽しかったというのは、具体的にどういうところが?
Merrymerry 個人的には自由度が高い楽曲という印象があります。コード進行やメロディがわかりやすかったってのもありますが、オケに合わせてギターを弾いてたら気持ち良いというか…。すみません、うまく言えないんですけど、好みなのかもしれません。
── なるほど。では次ですが、雰囲気が一変して『Flowers on the Battlefield』に入ります。このようなアレンジになった意図は何でしょうか?
Merrymerry この曲はアレンジですごく悩んでたと思います。一度ニコニコ時代のアレンジを引っ張り出してDTMに落とし込んだんですけど、これは違うなと思って白紙に戻して。で、また作り直して。もともと原曲にあるリフレインはギターでやりたいっていうのがまだ残っていたようで結局はニコニコ時代のアレンジに近い形にはなりましたが、唯一違う点はオーケストラ風の雰囲気を加えたところです。ピチカートのリフレインを入れるだけでこんなに変わるんだという発見もあって、何かと勉強させてもらった楽曲でもありますね。
── それは面白いですね。オーケストレーションを加える方向性の編曲というのはよくありますが、それを考えるとこの曲に関しては若干控えめのようにも感じました。これも意図したことですか?
Merrymerry いえ、これは単純に私の経験不足というか、力不足です(笑)。もっと派手にやりたかったというのは正直、あります。結局のところアレンジって引き出しの多さが勝負の分かれ道になるなと思っている部分があって、色んな音楽に触れた経験がモノをいう世界というか、それが引き出しを作っていくんじゃないかなと。でも私はまだまだそれが足りない。だからやりたいことを100%具現化できる技術や知識をまだ持ち合わせていないんです。だって、ほら、これ、そもそもリハビリですし(笑)。
── たしかに、よく分かります。ただ、そんなMerrymerryさんの経験が光ったと思ったのは次の『The Colosseum』だと思ったんですが、こちらはどうでしょう。
Merrymerry 私はギタリストの仕事をやっていたときは、ポップスやロックが専門だったんです。その所為もあってこの辺りの楽曲は数多く聴いてきたつもりではあります。それが活きたかどうかはわかりませんが、『The Colosseum』に関してはすぐに「こうしよう」というのが出てきてました。あとはやっぱり音作りとか弾き方とか、慣れてるだけあって楽でした。
── では次ですが、私の一番好きなアレンジ楽曲である『Heavens Tower』についてお聞かせください!
Merrymerry ありがとうございます!この曲は唯一サンプリングを使用しています。イントロのリズム楽器っぽいのがそうですね。ある楽曲の一部だけを切り取ってそれをループさせるという手法で、ヒップホップ界では定番だった技です。この寂れた感じのサンプリング音源の雰囲気がこの曲と非常に合っていると考えて起用しました。メロトロンという楽器を使っているのも同様の理由によるものです。あとは、ちょっと大人なポップスアレンジにしようという考えもあったので途中からリズムセクションをそちらへシフトさせて、もともと単調な楽曲なのでギターソロもスパイス代わりに入れてみました。
── いやあ、ごちそうさまでした(笑)。では次の楽曲『Stargazing』ですが、これもまた思い切ったアレンジですね。
Merrymerry エレクトロポップ?…なんというジャンルなのかよくわかりませんが、こんな雰囲気なら合うだろうというのは早い段階でありましたね。ただ実際DTMにイメージを落とし込んでみるとなかなかハマらなくて、けっこう試行錯誤してる楽曲でもあります。例えばギターは2チャンネル左右に振ってあるんですが、これは最初は1チャンネルで一緒に弾いていたり。ピチカート風の音色を使っているメインも元々はビブラフォンで鳴らしていたり。そんな感じで、あーじゃないこーじゃないを繰り返してました。
── そんな経緯があったとは…。とてもこのアレンジからは想像もつきませんでした(笑)。次の『Recollection』はまた大人な感じのアレンジになっていますね。
Merrymerry これは参考にしたバンドがいます。Fourplayっていうバンドです。一般にはあまり知られていないかもしれませんが、フュージョン系に触れたことのある方なら誰もが知ってる大物バンドです。まずメンバーが全盛期時代の読売ジャイアンツやレアル・マドリードみたいな豪華な顔ぶれで(笑)。
── 例えが(笑)。たしか ”世界で一番うまいバンド” とか ”世界最高峰のバンド” とか言われていましたよね?
Merrymerry そうですね。若かりし頃に色んな曲をコピーさせてもらいました。とはいえ、この曲にこのアレンジが通用するのかどうかというのはわからなかったので、ぶっつけで多少ギャンブルしました。またけっこう思い入れのある方も多いだろうっていう想像もしていたので、この曲を公開するときは少し緊張感を持ってた記憶があります。Twitterで頂いたコメントを引用させていただきますが、結果AOR的な雰囲気に仕上がった感じです。
── 次は『Tu'Lia』ですね。ちょっと意外な選曲だと思いました。
Merrymerry そうだと思います(笑)。一番といっていいくら好きな曲ですから!いや、ずっとカバーしたいと思ってたんですよね。通称では空っていうじゃないですか、あそこ。昔空LSのサブリーダーをやってた時期がありまして、当時はもう嫌ってくらいこの曲を聴いてたはずなんですが、今聴くとなんとなく感慨を覚える体質になっていたようで(笑)。そのせいか、雰囲気が変わるサビの部分とかは泣きそうになりますね。冒頭のホールトーンのリフも素敵だと思います。ファンタジーっぽいっていうか、遺跡感が出てて好きです。なので、この曲はあまりいじっていません。元が良いっていうか、好きだったので、これに私の体温をほんの少しだけ吹き込むというイメージでアレンジさせていただきました。
── もちろんアレンジも素敵なんですが、白虎佩楯もなかなかの素敵装備でしたね(笑)。
Merrymerry ほんと、作った人頭どうかしちゃったんじゃないかってレベルのステータスでしたね(笑)。
"布団を叩く音に「これだ!」感があって"
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── それでは終盤に入りますが、次は『Voyager』ですね。この曲のアレンジも私好きです。
Merrymerry ありがとうございます。やっぱり、ピアノの一定したリフレインがすごーく効いてると思います。すごく簡単なリフなのに(笑)。
── なるほど(笑)。でもあのリフがあるおかげで普通のポップスアレンジがぐっとお洒落になったような気がします。
Merrymerry 全く一緒ではないんですが、あんな感じのリフはフレンチポップやオルタナティブ系バンド、もしくはブルーグラスあたりでも稀に聴くことができます。つまりはそっち方面のバンドを参考にさせてもらいました。あとは、そうですね、さりげなく右チャンネルに元祖のアコギのリフを忍ばせているところもポイントです。うまく絡んでくれて良かったー!って思いました(笑)。
── もともとは癒し系というイメージが強かった楽曲ですが、このカバーではちょっと楽しそうな感じが伝わってきました。やはりそういったところも意図されていた?
Merrymerry そうですね。Twitterでは呟いていたんですが、例えば仕事を終えて酒場に集まってきた人たちがおもむろにこの曲のセッションを始めたらこうなるだろうっていうイメージを持っていました。なのでこの曲も早い段階でアレンジは固まっていました。
── なるほど、わかりやすい!では次の『Gustaberg』、これはもう名曲ですね(笑)。
Merrymerry いやほんと、名曲ってよく言われてるのでそれはもう丁重に扱いましたよ!結果、そんなに原曲から崩せなかったっていう…。一番コピーに近いカバー曲でしょうね(笑)。ただこの曲もけっこう苦労しました。まずタブラという打楽器が所持している音源に入っていなかったので代用のネタを探す必要があって。他の打楽器も雰囲気を崩さないよう慎重に選定して、色々と試奏させました。もっと言えば、この打楽器類の中に布団叩きで布団を叩く音も収録しました。
── 布団を叩く音!?
Merrymerry そうですね。母が外で布団を叩いてて、その音に「これだ!」感がすごくあって。すぐレコーダー持ち出して母と代わって収録がてら私が布団叩きました(笑)。
── なんという珍エピソード(笑)。
Merrymerry わりとこういうネタってメジャーアーティストにもあります。ガラスを落として割った音とか、空き缶転がした音とか、環境音っていうと少し違うかもしれませんが、そんな自然の産物を楽曲に取り入れている人は多いと思います。
── 言われてみれば確かに!そこらへんの物も楽器にできるって話も聞いてた気がします。それでは最後になりますが再び『Autumn Footfalls』ですね。この曲は先ほども伺いましたが、ニコニコ時代の楽曲ということですか?
Merrymerry そうです。このカバーアルバムの一部のレコーディングサポートやマスタリングをやってくれたKaedeさんって人がいて、その人がレコードシミュレーターみたいな機材を持ってたんですよね。それを利用させてもらいました。
── なるほど。ちなみにこの曲はギター2本のみで収録されているんですか?
Merrymerry そうですね。当時はカセットのMTRを使っていまして、あまり多くのチャンネルが使えないのでこんな感じの簡単な多重録音しかしてなかったんですよ。なので一本はバッキング、もう一本はメインというシンプルな構成でやりました。ほどなくしてDTMに移行はしたんですけど、それでもこのカセットMTRの音の質感は好きでしたね。やっぱりアナログっていいもんですね!
── 今でもアナログ盤でリリースするアーティストさんもいますもんね。さて、これで全曲終わりましたが、このアルバムに関して最後に何か一言があればお願いします。
Merrymerry 音楽は思い出と共にあると今回のカバーアルバムの製作を通じて再認識させてもらったのはとても大きかったです。本来はリハビリであったはずが、これはそんな音楽的な収穫や経験よりも重要なことでした。私がFF11に触れていたい原動力ってもしかしたらこのへんにあるのかなとも思いました。もう17年以上も続いているオンラインゲームですし、思い出もあって当然なんですが、それでも本当に良いゲームに出会えたなと。そんなことを日々感じながら素人ながらに手間暇かけて作り上げた音楽の幕ノ内弁当です。どうか末永く聴いてもらえますように!
※用語解説
DTM .... デスクトップミュージックの略。パソコンを使用した楽曲製作のこと。
MTR .... マルチトラックレコーダーの略。カセットやCD-R、HDDといった様々なメディアに対応した多くの種類がある機材。
ビブラフォン .... 鉄琴の一種。
ピチカート .... バイオリンやビオラなどの弦楽器を指で弾くこと。またはその音。
メロトロン .... 鍵盤楽器の一種で、有名どころではビートルズの「ストロベリーフィールズフォーエバー」のイントロがこの楽器によるもの。フルートやバイオリンなどの楽器を音階ごとにテープ録音して、それを再生して発音する仕組み。
ホールトーン .... 全音階(ドレミファ#ソ#ラ#)のみの6音で構成されたスケール。順に弾いてみるとおかしな響きになる。
AOR .... アルバムオリエンテッドロックの略。70年代にティーン向けのロックとの差別化を図って作られた呼称で、大人の鑑賞にたえるロックという意味がある。
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